更新日:2026年6月
執筆:武蔵NEXT|武蔵中学校・高等学校 OB講師

武蔵中学校の算数は、答えが合っていなくても点が取れる入試です。
これは慰めの言葉ではありません。武蔵の算数は答えだけを書く形式ではなく、考え方の過程を残す答案が求められ、その過程に対して部分点(途中点)が与えられます。つまり、最後の答えにたどり着けなくても、方針が合っていれば得点になる。この仕組みを理解して答案を書けるかどうかで、本番の得点は大きく変わります。
この記事では、武蔵算数で部分点を確実に取るための答案の書き方を、武蔵OB講師の視点で具体的にお伝えします。
1. 武蔵算数で部分点が大きい理由
武蔵算数の基本情報を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 配点 | 100点満点 |
| 試験時間 | 50分 |
| 大問構成 | 大問4題(各2〜3問の小問) |
| 2026年度 合格者平均(算数) | 57.0点(公式HP公表) |
| 2026年度 合格最低点(4科) | 173点 / 320点 |
武蔵の算数は、計算結果の正誤だけを見る試験ではありません。「どう考えたか」「なぜその答えになるのか」という思考の過程そのものを評価する出題です。だからこそ、答案には式や図、考え方を書く欄が十分に取られています。
武蔵の入試問題が部分点を重視するのは、この学校が一貫して「自ら調べ自ら考える」姿勢を大切にしているためです。暗記した解法を当てはめるのではなく、初見の問題に対して筋道立てて考える力を見ようとしている。その評価のために、過程を残した答案を採点対象にしているのです。
2. 「答えが合わなくても点になる」とはどういうことか
具体的に考えてみます。
ある問題で、解き方の方針は正しく立てられたのに、途中の計算でひとつミスをして最終的な答えが違ってしまったとします。答えだけを書く形式なら、これは0点です。しかし武蔵では、正しい方針と途中までの正しい立式が残っていれば、その分の点が与えられる可能性があります。
逆に、答えだけがたまたま合っていて過程が何も書かれていない答案より、答えは違っても考え方が正しく示された答案の方が高く評価されることすらあります。
2026年度入試を例に、合格に必要だった範囲を見てみます。武蔵算数は全4題でしたが、合格ラインに届くために必要だったのは次の範囲でした。※詳しくはこちらの記事をご覧ください
- 大問1 …… 全問
- 大問2 …… (2)まで
- 大問3 …… (2)まで
- 大問4 …… (1)のみ
この範囲を取り切れば、算数だけで合格に必要な得点(55点前後)には十分届きます。そして、ここから先の難しい小問でも、方針が合っていて途中まで書けていれば部分点が加わり、上位合格すら見えてきます。
つまり、難問を完答する力よりも、「取るべき問題を確実に取り、解ききれない問題でも過程を残す」答案技術の方が、合否に直結するのです。
3. 部分点を取る答案の5つの技術
技術1:求めたものに必ず単位と言葉をつける
「12」とだけ書くのではなく、「兄の速さは毎分12m」「赤い玉は12個」のように、何を求めたのかを言葉と単位で明示します。採点者は答案を読んで「この子は何を求めようとしたのか」を判断します。求めた量が何なのかが分かる答案は、たとえ最終解答に至らなくても、途中の到達点が評価されます。
技術2:図・表・線分図を必ず残す
速さ、図形、規則性、場合の数などでは、考えるために描いた図や表をそのまま答案に残します。消してしまうのは最ももったいない行為です。
正しい線分図や状況整理の図が描けていれば、それ自体が「問題を正しく把握できている」証拠になります。計算が途中で止まっても、図が正しければ部分点の対象になります。
技術3:立てた式に「何を計算しているか」を添える
式だけを並べるのではなく、その式が何を求めるためのものかを一言添えます。
例:「(全体の仕事量)÷(1日の仕事量)=かかる日数」のように、式の意味を書いておく。採点者は、式の意味が分かれば「方針は正しい」と判断できます。意味の分からない数字の羅列は、たとえ正しくても評価しづらい答案になります。技術1が徹底できている場合は省略して構いません。または、最後まで解ききれそうにない難問で部分点を狙うときに活用してください。
技術4:場合分けは「どの場合を考えているか」を見出しにする
場合の数や条件整理の問題では、「①〜のとき」「②〜のとき」と、今どの場合を検討しているのかを明示します。
全部の場合を尽くせなくても、「①のとき」を正しく処理できていれば、その部分は得点になります。場合分けの枠組み自体が正しいことも評価対象です。
技術5:詰まったら「ここまで分かったこと」を書いて止める
最後まで解けなかったとき、白紙やぐちゃぐちゃの計算跡で終わるのではなく、「ここまでで分かったこと」を一行整理して残します。
例:「三角形ABCと三角形DEFは相似。相似比は2:3。ここから面積比を求める。」方針が示されていれば、それも採点者への手がかりになります。
4. やってはいけない答案の書き方
部分点を取りに行くうえで、避けるべき答案の形があります。過去問演習で繰り返し見られるパターンです。
答案を消しゴムで消してしまう
時間に追われると、間違えた計算をすべて消してしまう子が多くいます。しかし、その消した過程の中に部分点の対象があったかもしれません。間違いに気づいたら、消さずに線で軽く消し、新しい計算を続けるのが安全です。
答えだけを書いて過程を書かない
「自信があるから答えだけ書く」のは、武蔵では危険な選択です。万一答えが違っていたとき、過程がなければ0点です。過程を書いておけば、計算ミスでも方針点が残ります。
字が乱れて読めない
採点者が読めない答案は評価されません。特に時間が押した大問の後半で字が崩れがちです。「速く」よりも「読める速さで」書く意識が必要です。
問われていない量を延々と計算する
設問が「面積」を求めているのに、関係のない長さや角度を長々と計算するのは、時間も答案スペースも浪費します。常に「今、何を求めるための計算か」を意識します。
5. 部分点を前提にした本番の時間配分
武蔵算数は50分で大問4題です。1題あたり単純計算で12分強しかありません。部分点を最大化するには、時間配分の戦略が欠かせません。
まず全問の(1)を確保する
各大問の(1)は、基本的な考え方が身についていれば解ける難度です。最初に全大問の(1)を確実に取り切ることで、合格に必要な得点の土台ができます。
解ける問題から手をつける
問題は前から順に解く必要はありません。ざっと全体を見て、確実に取れそうな問題から処理します。難問に時間を吸い取られて、取れるはずの問題を落とすのが最も避けたい失点です。
最後の5分は「部分点の回収」に充てる
完答できなかった問題に戻り、図や途中式、分かったことを書き足します。この5分で数点が積み上がり、合否を分けることがあります。
6. 学年別・答案力の伸ばし方
小4:式を書く習慣をつける
- 暗算で済ませず、簡単な問題でも式を書く
- 答えに単位をつけることを徹底する
- 図を描いて考える経験を増やす
小5:途中式と図を「人に見せられる」形にする
- 自分の答案を後から見て、何を考えたか分かるか確認する
- 線分図・面積図・表の描き方を身につける
- 間違えた問題は、どこで方針がずれたかを言葉にする
小6:武蔵型の答案で得点を最大化する
- 過去問演習で、解けない問題でも部分点を取る練習をする
- 時間を計り、本番同様の時間配分で解く
- 答案を添削してもらい、「どこで点が取れて、どこで取りこぼしたか」を具体的に把握する
7. よくある質問
Q1. 部分点は具体的に何点もらえるのですか?
各小問の配点や部分点の基準は公表されていません。そのため「この書き方で何点」と断定はできません。ただし、武蔵算数が過程を評価する出題であることは、合格者平均点(2026年度57.0点)と問題の難度から見ても明らかです。過程を残す答案は、残さない答案より有利になります。
Q2. 答えだけ合っていれば満点ではないのですか?
設問の指示によります。「答えのみ記入」の形式であれば答えが評価対象ですが、考え方や式を書く欄がある問題では、過程も含めて評価されると考えるべきです。いずれにせよ、過程を書いておいて損をすることはありません。
Q3. 図はていねいに描かないと減点されますか?
清書する必要はありません。求められるのは「正しく状況を表した図」であって、美しい図ではありません。フリーハンドでも、関係が正しく表現されていれば十分です。
Q4. 部分点を狙う練習は、いつから始めればよいですか?
答案を書く習慣は早いほど良いですが、本格的に「部分点を取る答案」を意識するのは小6の過去問演習期からで十分です。それ以前は、まず基本問題を正しい式と図で解く土台づくりを優先します。
Q5. 塾の授業だけでは答案力は身につきませんか?
集団授業では、一人ひとりの答案を細かく見てもらう時間が限られます。答案力は「自分の書き方のどこに点があり、どこを直せば点になるか」を個別に指摘されることで伸びます。答案添削の機会があるかどうかで、伸び方は大きく変わります。
8. まとめ
武蔵算数は、難問を完答する力で合否が決まる試験ではありません。
- 武蔵算数は100点満点・50分・大問4題。2026年度の算数合格者平均は57.0点
- 答えが合わなくても、方針と過程が正しければ部分点になる
- 求めた量に言葉と単位をつけ、図・表を残し、式に意味を添える
- 場合分けは見出しをつけ、詰まったら「分かったこと」を残す
- 答案を消さない、過程を省かない、読める字で書く
- 全問の(1)を確保し、最後の5分で部分点を回収する
武蔵の算数は、正しい答案の書き方を身につけることで、同じ実力でも確実に得点を伸ばせる科目です。
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武蔵中受験対策については下の記事もご覧ください。



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